港町を歩いていると、天気雨が突然降ってきた。傘を持っていたが、なぜか開く気にはならなかった。滴る雨が薔薇の花びらを濡らし、その姿はどこか儚く美しかった。そんな光景に見とれていたが、足が重く感じ始め、何かが胸の中でざわめき出した。
ふと、ある場所に辿り着いた。ここはかつて誰かから手紙を受け取った場所だったことを思い出した。あの時の言葉が脳裏をよぎり、懐かしさと同時に、込み上げてくる感情に襲われた。
突然、胃が痛み、耐えきれずにその場で嘔吐してしまった。雨音に混じって、自分の息遣いが荒く聞こえる。何かから逃げようとしていたのか、それともただ夢から目を覚ましていただけなのか、よく分からなかったが、とにかく現実はこうだった。
疲れた体を引きずりながら、静かに家路に向かう。道すがら、もう一度薔薇の花を見たが、今度は何も感じなかった。あの時の手紙は今も胸の奥にあるが、もう読む気にはならない。